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『ラ・バヤデール』ー5月18日19時30分公演 [芸術関係]

何ヶ月ぶりに更新するのか分からないぐらい放っておいてしまって
ごめんなさいと思っているmarineです、ぼんじゅーる!

就職活動中という理由で、そのことに集中するためにも更新をストップさせていましたが、
まだまだ活動しなければならないようなので、そろそろ再スタートさせてもらいます。
様々なニュースで「今年も就職活動は大変だ」といわれていますが、その言葉通りです。
とはいえ、私は他の人たちよりも少し遅く活動し始めたので、そんなに焦っておらず、
「焦りは禁物、為せば成る為さねば成らぬ何事も~!」と呪文のように唱えています。

さて、今回はどの人もお忘れであろうパリ最後の夜に鑑賞した『ラ・バヤデール』の感想文です。
(何はともあれ、2010-2011シーズン幕開けまでに書くことが出来てよかったです(苦笑)。)


mini-CIMG4539.jpg

留学最後のバレエ鑑賞はこういう場所でした。
留学生にはピッタリの場所だと思います(ニヤリ)。

今回の『ラ・バヤデール』は人間味あふれる物語だったと思います。
登場人物1人1人が精一杯で生きているということがよく伝わってきましたね。
やはり舞台は「一期一会」ですね。
ダンサー1人1人の解釈によって舞台が違うものに変わってしまうので、
舞台を鑑賞するときは目の前で繰り広げられる物語そのものを楽しまないといけないんだな、
ということを改めて学んだような気がします。本当に舞台は面白いです!

簡単にキャストを書いておきますね。

ニキヤ:オーレリ・デュポン
ソロル:ニコラ・ル・リッシュ
ガムザッティー:ドロテ・ジルベール

ブロンズアイドル:アレッシオ・カルボネ
ファキール(行者):アリステール・マダン(Allister Madin)?※今回はフランス語読み
大僧正:ウィルク(Wilk)
ラジャ:エリック・モナン
マヌー:シャルリーヌ・ジザンダネ
影の王国ソリスト:サラ・コーラ・ダヤノヴァ、マチルド・フルステ、マリー・ソレーヌ・ボレ

オーレリのニキヤとル・リッシュのソロルの恋はまるで『ロミオとジュリエット』のような
若々しく情熱的なものだったように見えました。
この恋について、私は「若木を連想させるフレッシュな恋だった」と日記に書いています。
この2人は美男美女で幸せそうなんだろうなと思わせるものがあり、
だからこそ『ラ・バヤデール』という物語がドラマティックに見えてくるんだということに気づきました。
私は『ラ・バヤデール』という作品に対して宗教も関わっていることもあって、
神秘的と俗世的なものが上手い具合に絡み合っているという印象を持っていたのですが、
今回に関しては登場人物1人1人のドラマを観ているという気持ちでした。

オーレリのニキヤは1人の女としての「美」を感じさせる舞姫でした。
この「美」というのは、ソロルという1人の男性を愛しているからこそ輝いているものでした。
そのような愛に目覚めていたオーレリのニキヤは舞台で光り輝いているように見え、
私はニキヤの運命を考えると切ない気持ちになりました。
この清らかな美の輝きを放っている彼女のニキヤは大僧正に対しては男らしく、
ソロルに対しては乙女として接していたのも印象的でしたね。
(特に男らしく見えたのは最初の大僧正からの恋の告白?に拒絶しているところでした。)
2幕でニキヤがソロルとガムザッティーの婚約披露パーティーで1人踊る場面については、
彼女の演技力で観客を彼女1人に集中させたと思います。
アニエスのニキヤは神々しく演じていたので周りとは違う空気にひっぱられるように観ましたが、
オーレリの場合、女性としての喜怒哀楽を全て出し切ろうとする踊りに夢中になりました。
本当にこのときのオーレリは凄かったです、まさに「完敗」でした。
2幕のニキヤは出番がガムザッティーより短いので、いかに存在感を出すかが重要なのですが、
オーレリにとって、それは取るに足らないことだったんだろうなと思いました。
本当にニキヤが息絶えるまでの踊りには彼女のエネルギーを感じさせ、圧倒されました。
しかし、影の王国では彼女のニキヤは人形のようでした。
確かにもう死んでしまっているので、そこで人間らしさが出ては駄目なのですが、
ただただ美しい幽霊が舞台に立っているように見えました。
このときの彼女のニキヤは「神々しく」見えました。
1幕から見せていた人間らしい「美」は3幕では消えていた代わりに神々しい「美」が感じられました。
本当にこの世の人ではないんだなあと思わせるものがあったので、
ソロルが見ているものは「幻」であるような気がしました。
そのように考えると、『ラ・バヤデール』はニキヤではなくソロルの物語なのであって、
ニキヤはソロルにとって運命の相手ではなく思い出の恋愛をした相手になるのかな?
…というようなことをホテルに戻ってからあれこれと考えていました。
(そこが『ロミオとジュリエット』と異なるのかな?と思います。)

ル・リッシュのソロルは若くてエネルギッシュな人物でした。
未来を期待されている戦士であることがよく伝わってきました。
今までル・リッシュをかっこいい!と思ったことが一度も無かった私ですが、
このとき初めて彼がハンサムであることを感じられました。
これはソロルという役柄を演じていたからでしょうか、もしくはソロルが若者だったからでしょうか。
まあ、とにかく、このときの彼はかっこよかったのです。
ですから、かっこよくもかっこ悪くも変身することのできるル・リッシュは演技派ダンサーなのだな、
ということを改めて実感することが出来ました。
彼のソロルはあまりにも若く周りが見えていないような戦士でした。
ただニキヤへの愛に生きていたのだけれどもその愛を貫くだけの精神力がなかったための悲劇、
そのように私は彼のソロルに対して考えています。
だから、彼の若さが生んでしまった物語が『ラ・バヤデール』なのかもしれません。
そのような理由だからこそ、ニキヤの死後彼のソロルはボロボロになったのでしょう。
苦しんでいるソロルを見ているのがつらくなってファキールはアヘンを彼に差し出し、
そのアヘンによって「影の王国」という幻を見るーこのあらすじをそのまま舞台で見せてくれたのが
ル・リッシュだったと思います。ダンサーによって役の解釈はバラバラなのですが、
目の前にある物語をそのまま見せてくれる人はなかなかいないような気がして、
彼の凄さを改めて感じました。素晴らしかったです。
ヌレエフ版『ラ・バヤデール』は「影の王国」で物語が終わるので、
その後にどのような出来事が展開されるのか全く分かりませんが、
私は心優しいニキヤは天国でソロルを常に見守っているような気がしましたし、
ソロルは無事素敵な女性と結婚できたのではないかと推測しています。
しかし、彼が1番好きだった女性はニキヤのままに違いないんだろうな、という感じに。
そのような理由から「影の王国」は彼の青春を終わる瞬間の象徴であり、
彼にとってニキヤを殺したという罪を少しでも和らげる薬でもあったのかもしれないと考えています。
ル・リッシュはオーレリやドロテちゃんに負けないぐらいの演技派で、
彼の不安定なバレエダンサーとしての技術をカバーできるぐらいのものだと思いました。
そういう理由から、この『ラ・バヤデール』はソロルが主役の物語であるような気がしました。

ドロテちゃんのガムザッティーはただのわがままなお嬢様でした。
美しさも冷酷さも兼ね備えている女性でした、彼女のガムザッティーは。
一目惚れをした相手であるソロルと一緒にいる彼女はラジャの娘であるという誇りと自信を
持ちながら彼を愛していることがよく伝わってきました。
だからこそ恋のライバルであるニキヤに接するときの彼女は悪魔のように恐ろしかったです。
大僧正がソロルがニキヤと恋していることをラジャに告げ口をしているところを立ち聞きした彼女は
もちろんショックを受けていただろうけれど、だからこそソロルを手に入れるという決心を感じさせ、
彼女の強さがどれぐらいのものなのか感じることができました。
ですから、1幕でのニキヤとガムザッティーの喧嘩は凄まじいものでした、恐ろしかったです。
2人の女性ともソロルへの愛が深いからこそ「絶対に渡せない!」という意思がよく分かり、
私は「女の修羅場とはこのようなものなのか」と恐れおののいてしまいました(苦笑)。
女の感情が爆発した、本物の喧嘩だと心から思いました。
2幕で毒蛇にかまれたニキヤが「あなたのせいねっ!」と指差されても、
ニヤリと笑うドロテちゃんのガムザッティーが今でも忘れられないぐらい怖かったです。
技術的なことでも、ドロテちゃんは素晴らしかったです。
1つ1つのワザやポーズを丁寧にこなしつつも威厳を感じさせる踊りでした。
コゼットとは又違うガムザッティーに出会えて、本当によかったです。

カルボネさんのブロンズアイドルは見た目が麗しいだけではなくジャンプも安定していてよかったので、
彼のブロンズアイドルも鑑賞できてよかったです。
一応、奥様がドロテ様なので、ちょっぴり「夫婦共演」もできてよかったねと思いましたね、うふふ。

ジザンダネのマヌーは表情がコロコロと変わって愛らしかったです。
技術的に非常に安定していたので、安心して鑑賞することができました。
「こういうマヌーが観たかったんだよね」と思いながら楽しませていただきました。
本当にマヌーの踊りはかわいらしくて好きですね。
一緒に踊る2人の少女は前日とは違う2人でした。
見覚えのある女の子達だったので、「頑張っているな」と微笑ましく観ていました。

ファキールさんは昨日と同じマダンさんなので、感想は割愛させていただきます。
今回も好演していて、とてもよかったです。

大僧正はウィルクさんでした。前日のサイズさんはまだ若者らしさが残っている人物として、
ソロルの恋のライバルとして舞台に立っているような印象を受けたけれど、
今回はニキヤから論外と思われているような大僧正さんでした。
すっかり俗世のことを忘れていた人物だったけれど、ニキヤとの出会いによって、
人間としての感情に再び目覚めたんだろうなという感じの男性でしたね。

モナンさんのラジャはしっかりと舞台を支えているなと感じながら見ていましたね。

1幕の終わりでニキヤと一緒に踊る奴隷役にはヤン・ブリタールが演じていましたが、
このような場面で彼のようなダンサーが使われていることが非常に豪華なことだなと思ったので、
「凄いなあ」と思いながら観ていました。化粧の関係でかっこよく見えなかったのは残念ですが、
パ・ド・ドゥのサポートがとても上手で、さすがにプルミエさんだなと思いました。

影の王国のソリストについても。
1番最初のアダージオ(Va)はダヤノヴァさんでしたが、とてもよかったですね。
(…でも、私好みは前日踊ったパリエロさんでしたが。)
彼女の踊りは安定しているのでいいなと思います。
2番目のアレグロ(Va)はフルステ嬢でしたが、
前日のユレル姉さんの素晴らしい踊りを観ているだけに「もうちょっとかな」と思いました。
彼女なりの精一杯だとは分かっていますが、もうちょっと上を求めてしまうんですな、私は。
3番目のアンダンテ(Va)は前日と同じボレさんでしたので、感想は割愛します…。
しかし、前日に比べると踊りはとても安定していてよくなっていました。
影の王国のコールドの方も前回同様に綺麗でした。

前日とはまた違う『ラ・バヤデール』を鑑賞したことで、この作品の奥深さを実感しました。
これからも色々なキャストで見てみたいと思ったけれど、
今回私はオーレリやニコラ、ドロテちゃんの『ラ・バヤデール』を観られてよかったです。
この公演が留学の最後を飾ったわけだけれど、この選択は間違っていなかったと心から言えます。
それほどまでに美しい舞台を見せてくれたパリオペラ座バレエには感謝の気持ちで一杯ですし、
22日あたりから「ローラン・プティの夕べ」という公演で今シーズンをスタートさせるバレエ団を
今後もしっかりと応援せねばという気持ちになりました。

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本当に素敵な舞台に感謝の気持ちをこめて…!

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コメント 4

夢空

就職活動・・・そうそう焦らず焦らず、じっくりとね(^_-)☆
応援してるよっ!
by 夢空 (2010-09-20 09:03) 

marine

Roseさん、mikosukeさん、nice!をありがとうございます。

>夢空さん
就職活動は現在お休み中ですが、自分のやりたいことが見えてきたので、
それに向かって頑張りたいと思います。応援ありがとうございます。
by marine (2010-11-02 20:27) 

Roseblanche

コメント書くの、久しぶり♪
このときのポスター、家に飾ってあるの、本当に宝物だね。
奇跡のメンバーのような気がする。
また絶対、パリに行って、バレエ三昧しようね。

by Roseblanche (2010-11-05 19:46) 

marine

そうですねえ、あれは宝物だねえ。
まさかの公演ポスターを手に入れられたんだから大事にします。
本当にこの公演のキャストは夢のようなものだったなあ。
またパリでたくさんバレエを観ましょうぞ。
by marine (2010-11-06 21:08) 

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