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『ラ・バヤデール』ー5月17日19時30分公演 [芸術関係]

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今日から2回にわたって『ラ・バヤデール』(ヌレエフ版)の感想を書いていきます。
今回は5月17日の『ラ・バヤデール』初日についてです。

その前に…
昨日千秋楽を迎えた『ラ・バヤデール』の舞台で
ステファン・ビュリヨンさんがエトワールに任命されたようです。本当におめでたいことです。
最近男性ダンサーの任命が続いているので今度は女性ダンサーなのかなあ?


それまでもずっとヌレエフ版の古典作品にはまっていた私ですが、
この『ラ・バヤデール』で「私はヌレエフ版演出が好きなんだなあ」ということを自覚しました。
ヌレエフ版『ラ・バヤデール』は有名な白いバレエである<影の王国>で物語が終わります。
そのあとのことは一切描かれていません。
しかし、その分、ニキヤの美しい心というものを感じさせて…本当にニキヤが好きになれました。
それまでは最後にガムザッティーなど自分(ニキヤ)を陥れた者への復讐をしてしまう彼女に
感情移入することが全くできなかったのです。
また、最後をニキヤとソロルの愛を再確認するような影の王国で締めくくったのが
「ニキヤとソロルの愛物語」を印象づけたような気がしました。

そのように感じられたのもアニエス・ルテステュのニキヤだからこそ。
彼女のニキヤはどこか浮世離れした…他人とは違う崇高さの持ち主でした。
どこまでも清らかな美しさを感じさせました。
だからなのか、ガムザッティーとの喧嘩シーンはあまり迫力を感じさせず、
ソロルを絶対に渡したくないという執着心を見て取ることができませんでしたね。
ソロルとガムザッティーの婚約パーティーでのあの一人芝居も巫女ならではの嘆きや喜びであって、
1人の男性を愛する女性としてのものではなかったですね。
ここからアニエスのニキヤは彼女の存在そのものが生かされていたような気がしました。
そして、彼女のニキヤは<陰の王国>でようやく光り輝いているように見えました。
(今回もジョゼと組んでいるせいか「JEWELS」のダイヤモンドを連想してしまった…。)
アニエスはそこまで踊りが上手とは思えないのですが、エトワールとしての風格が感じられ、
それがいい意味でニキヤの役作りに生かされたと思います。

そんなニキヤを愛するジョゼ・マルティネズのソロルは女性には敵わない戦士でしたね。
また、彼のソロルはしっかりとした信念の持ち主ではなく、
周りの意見にすぐに従ってしまい、自分の気持ちを捨てて生きているような男性でした。
まあ、それが当時の戦士にとって当たり前のものだったと思います。
だから彼のソロルは現代の日本人男性に通じるものがありましたね。(…草食男子とかヘタレとか。)
ジョゼの踊りに関して言えば「絶好調」であり引退間近のダンサーには見えませんでした(笑)。

ソロルをめぐってニキヤと対立するエミリー・コゼットのガムザッティーは<冷たい美>の女でした。
彼女の持ち味が存分に生かされているなあと思いましたね。
彼女のガムザッティーは氷のように冷静に物事を見つめているだけでなく、
欲しいものを何でも手に入れることができることを彼女自身の身分から当たり前だと信じていたように
私には見えました。だからニキヤとの喧嘩もどこか冷めているんですよね。
というのも彼女は自分自身のほうが優位であることを分かっていたからなのかなあと思います。
そういう彼女の性格がニキヤを殺害する動機に影響を与えたと考えてしまいました。
コゼットの踊りについてはあいかわらず肩に力の入ったものでした。
ガムザッティーの踊りはほとんどダイナミックなのですが、だからこそきちんと踊るべきなのです。
しかし、彼女はどこか乱暴に踊るのでちょっと残念だなあと思ってしまいました。

ヌレエフ版では華やかな婚約パーティーで踊るマチアス・エイマンのブロンズ・アイドルは、
非常に素晴らしかったです。…「さすが!」の一言しか思い浮かんできません。軽々と踊っていました!

同じく婚約パーティーで踊っていたマチルド・フルステのマヌーはまさに東洋美人でした!

行者(ファキール)のリーダー?を演じていたアリスター・マダン(Allister Madin)が凄くよかったです。
立ち振る舞いからファキールそのもので思わず私の目が点になりました。
婚約パーティーでのインディアンもエネルギッシュでゾクゾクとするものがありました。

大僧正のヤン・サイズは若々しいというかまだ俗世から気持ちが離れていないような気がしました。
だからこそ彼がニキヤに恋してしまうのが分かりました。
今回サイズもこの役にキャスティングされていることに非常に驚いてしまいました。

ガムザッティーの父であるラジャにはステファン・ファヴォラン。
彼はこういう役を演じ慣れているような気がしていたのですが、
まさにその通り!と思ってしまうぐらい、安心して彼のラジャを観ることが出来ました。

そうそう…忘れていました!
ヌレエフ版では大僧正とラジャの会話をソロルとガムザッティーが立ち聞きする様子が描かれていて、
そこの演技が見逃せないのです。ソロルが聞いてラジャの家から思わず去ってしまったり、
ガムザッティーがソロルとニキヤの仲を知ってショックを受けてしまい彼女を呼び出したり、
このような小芝居を観るのに集中してしまってラジャたちの会話をほぼ観られませんでした。。。
また、ガムザッティーとソロルの婚約が決まってラジャの家でニキヤと奴隷が踊るのですが、
そのときにソロルが誰にも観られないように隠れながらニキヤをそっと見守る様子も見逃せません!
ソロルのニキヤへの愛を感じられて微笑ましいなあと思いました。
(初日の奴隷はオドリック・べザールでした。)

さて、<影の王国>は夢そのものでした。
コールドはマリインスキー劇場バレエに比べると揃っていなかったかもしれないけれども、
2009年秋に鑑賞した『ジゼル』に比べると本当に夢を見させてもらいました。美しかったです!
やはり白いバレエと呼ばれる場面の主役はコールド・バレエ(群舞)だなあと思いましたね。
ヴァリエーション(Va)は始めに最初にゆったりとしたもの、
次にアレグロのようなちょっと早いテンポのもの、最後にアンダンテのようなテンポのもの、
という順番になっています。この順序も各バージョンによって異なることを今回初めて知りました。
1番目のVaは今回リュドミラ・パリエロが踊っていました。
彼女の踊りをきちんと観るのはこのときが初めてだったのですが、癖のない踊りだなあと思いました。
彼女が近頃注目されるようになったのも理解できます。これからの彼女も楽しみです。
2番目のVaはメラニー・ユレルが担当していました。
「ユレル姉さん!」と言いたくなるぐらい安定感のある踊りを今回も披露してくれました。
さすが職人!と思ってしまうぐらいのもので…安心して観ることができました。
3番目のVaはマリー=ソレーヌ・ブレが踊っていました。
最初の配役では初日に第3Vaを踊るのがグランスタインになっていたので、
今回の配役変更は突然だったのかなあ?と思います。…きっとグランスタインは怪我をしたのでしょう。
そういう事情のなか、立派に代役をこなしたブレに拍手を送りたいです。
(だからなのか、ブレの踊りに練習不足を感じてしまいました…これは仕方がないことですけど。)
彼女はまだまだ成長できるんじゃないかなあと思いました。

初日のバヤデールはまさに「王道」と思えるものでした。
誰もが想像してしまう『ラ・バヤデール』だったのではないでしょうか。

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今日はこれぐらいで!

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コメント 3

Roseblanche

チケット難だったのがよく分かるわ。
ガルニエでの『ラ・バヤデール』…さぞかし豪華だったことでしょうね。
ルテステュは長身なのに、ダイナミックさよりも儚さが印象に残る人だから、
まるで精霊のようなニキヤだったのね。
2日目のキャストのレビューも、楽しみにしています。
by Roseblanche (2010-06-07 15:08) 

Inatimy

RoseBlanche さんのところで、この『ラ・バヤデール』のことを知り、
その時は、もしかしたら、現地で見られるかなぁ、なんて思ってたのに、
実際には、ちょうどその時間、日本で寝てました・・・。 あらら。
by Inatimy (2010-06-07 20:06) 

marine

りんこうさん、夢空さん、nice!をありがとうございました。
…そして皆様、返事が遅くなって申し訳ありませんでした。

>Roseさん
チケット難だった公演であることはよく頷けたね。
ガルニエでの『ラ・バヤデール』は夢のようでした、観られてラッキーでしたわ。
2日目のレビューもお楽しみに。

>Inatimyさん
その頃は日本に戻っていらしたんですね。
是非何かいい機会がありましたらパリオペラ座バレエを鑑賞なさってくださいね。
フランスでバレエの基礎ができあがったようなものですから、是非是非。

by marine (2010-09-19 22:26) 

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